皆さん、こんにちは!「下町AI探究者」のガジュマロです。
いつもこのブログにお付き合いいただき、ありがとうございます。これまで、AIって何ができるの?という基本の話から、アカウント登録なしで試せるAI、簡単なプロンプトのコツ、文章作成のお手伝いなど、色々な角度からAIとの付き合い方を探求してきました。
皆さんも、少しずつAIとの対話を試されている頃でしょうか? 「お、これは凄いな!」と感じる場面もあれば、「うーん、なんかいまいち回答が薄いな…」「いや、そうじゃないんだよな…」なんて、もどかしさを感じる場面も、ひょっとしたら出てきているかもしれません。
AIとの対話に慣れてくると、「AIは凄い時と、そうでない時の差が激しいのかな?」などと感じることもあるかもしれませんね。そして実はその差、AIの能力だけが原因ではないのかもしれません。
AIとのお付き合い、最初の一歩 ~「お願い上手」って、どういうこと?~
これまでも、お願いの仕方については折に触れてお話ししてきました。では、なぜ今、改めてこの「プロンプト」を取り上げるのでしょうか?
それは、AIの性能がどれだけ進化しても、その能力を引き出す鍵を握っているのが、私たちユーザーの「お願いの仕方」だからです。上手にお願いできれば、AIはより的確で創造的な答えを返してくれる可能性が高まるでしょう。
そして、AI技術の最先端を走るGoogleさんが、まさにその「お願いの仕方」を体系的にまとめ上げた「Prompt Engineering(プロンプトエンジニアリング)」という技術資料を公開しています。これは、いわばAIの能力を最大限に引き出すための設計図のようなもので、専門家の方々も注目する非常に価値のある情報なのです。
(参考リンク:https://www.kaggle.com/whitepaper-prompt-engineering)
「あ、専門家向けね…」と思われた方、心配はいりません!
このブログの新シリーズでは、このGoogleさんの貴重な資料をいわば『羅針盤』として、私ガジュマロが皆さんと一緒に、AIへのお願いの仕方を基本から応用まで、数回にわたって、できるだけ分かりやすく探求していきたいと考えています。
これまでAIの基本に触れてきた皆さんなら、きっと興味深く、そして「なるほど!」と膝を打つような発見があるはずです。また、このシリーズを読み進めていただければ、AIとの対話がもっと意図通りに、もっと効果的になる「プロンプトエンジニアリング」の本質的な考え方が、自然と身についていくことでしょう。
さあ、AIとの関係をもう一歩深め、より賢く、より頼れるパートナーとして付き合っていくための探求を、一緒に始めましょう!
まずは、内容紹介
googleさんの技術資料、「Prompt Engineering」の内容をかみ砕いてお伝えする「プロンプト講座」は、以下の内容で6回に分けてお伝えします。「これはもう知っているな」や「今これが一番問題だから、これを最初に読みたい」という方は、そのシリーズ番号に飛んでいただいて大丈夫です。
- 第1回:AIの仕組みと「お願い上手」の基本
- 第2回:シンプルに頼む方法&お手本を見せる方法 (ゼロショット/フューショット)
- 第3回:AIに役割・ルール・状況を伝える工夫 (ロール/システム/コンテキスト)
- 第4回:AIにもっと深く考えてもらうヒント (ステップバック/CoT)
- 第5回:実践編!Excel作業などをAIに手伝ってもらうヒント
- 第6回:総集編!お願い上手・心得帖
それでは、内容の方に移っていきましょう。
「お願い上手」になるための基礎固め
今回は、第1回目。AIが私たちの言葉をどう扱っているのか、その仕組みの基本(少しおさらいになりますが、大切なポイントです!)について、改めて一緒に確認します。ここをしっかり押さえておくことが、今後の応用編を理解する上でもきっと役立つはずです。
AIって、どうやって言葉を「理解」しているの?
まず、AIに上手にお願いするコツを知る前に、AIがどうやって私たちの言葉を「理解」しているのか、簡単に振り返ってみましょう。
ChatGPTやGeminiのような「大規模言語モデル(LLM)」と呼ばれるものは、ものすごく大雑把に言うと、「次にどんな言葉が来るのが一番もっともらしいか」を、ものすごい量の文章データから学習して、予測しています。
たとえば、「今日はいい天気ですね。こんな日は…」と続いたら、「散歩でもしたいですね」とか「洗濯物がよく乾きそう」とか、色々な続き方が考えられますよね。AIは、過去に読んだたくさんの文章から、「こういう文脈の後には、こういう言葉が続くことが多いな」というパターンを学習していて、それに従って言葉をつないでいきます。
だから、実はAIは、人間のように言葉の意味を完全に「理解」しているわけではない、とも言われています。あくまで、統計的に「次に来そうな言葉」を予測している、という側面が強いのですね。
ここが、AIへのお願いが上手くいったり、いかなかったりする理由の一つかもしれません。
先の例でいえば、「今日はいい天気ですね。こんな日は…」の後に私たちが「山登りに最適です!」と思ったとします。これは、私たちが(例えば)山登りが趣味で、今日は休日で、山登りの計画を立てていた、という背景や前提があるからそう思ったのです。しかしAIは、この背景を知りません。ですので、先に示したように、「散歩でもしたいですね」や「洗濯物がよく乾きそう」などと、私たちにとっては見当違いなことを言い出すこともあるわけです。
こうならないように、「お願いの仕方」にちょっとした工夫が必要になってくるのですね。
「お願い上手」ってどういうこと?(プロンプトエンジニアリング入門)
さて、本題の「お願いの仕方」です。AIに対する指示や質問のことを「プロンプト」と呼びます。
そして、今回のシリーズのテーマでもある「プロンプトエンジニアリング」ですが、これは要するに、
「AIが私たちの意図を汲み取りやすいように、そして私たちが望む答えや成果物を返してくれるように、プロンプト(お願いの仕方)を工夫すること」
です。
例えば、旅行先で道を聞く時を想像してみてください。
- 曖昧なお願い:「すみません、この辺でおすすめの場所ってありますか?」
- 少し具体的なお願い:「すみません、この近くで、静かにコーヒーが飲めるカフェを探しているんですが、ご存じないですか?」
どちらの方が、あなたが求めている情報に近い答えが返ってきそうでしょうか? きっと、後者ですよね。
AIへのお願いも、これと似ています。
- 曖昧なプロンプト:「何か面白い話をして」
- 少し具体的なプロンプト:「小学生が笑えるような、短いユーモラスな動物の話を3つ作って」
曖昧なお願いだと、AIも「面白い話って言っても、どんな…?」と困ってしまい、的外れな答えを返してくるかもしれません。でも、少し具体的に条件を付けてお願いすれば、AIも「なるほど、小学生向けの、ユーモラスな動物の話ね!」と、意図を汲み取りやすくなり、期待に近い答えを出してくれる可能性が高まります。
このように、AIの能力を上手に引き出し、私たちが望む結果を得るために、「どうお願いするか(プロンプトをどう書くか)」を考え、工夫することが、プロンプトエンジニアリングの第一歩であり、とても大切なことなのです。
まとめ:AIとの対話、最初の一歩
さて、今回はAIとのお付き合いを始めるにあたっての、基本的な考え方についてお話ししてきましたね。
- AIへの「お願いの仕方」(プロンプト)が、思った以上に大切そうだということ。
- AIは言葉を「予測」して話しているらしいということ。
- (コラム)AIの答え方を少し調整する「ツマミ」のようなものもあるらしいこと。
なんとなく、「プロンプトって、なんだか奥が深そうだな」と感じていただけたでしょうか。
AIとの対話は、一方的に指示を出すだけではなく、まるで人間とコミュニケーションをとるように、どう伝えれば意図が伝わるか、どう聞けば望む答えが返ってくるかを考え、試していくプロセスでもあるようです。
そうする中で、AIは次第にあなたの思いや状況を汲み取り、欲しい回答をくれるようになってくるかもしれません。
次回予告
次回は、いよいよ具体的な「お願いの仕方」の基本パターンを探求していきます!特別な準備なくお願いするシンプルな方法と、AIにお手本を見せてお願いする方法。それぞれのコツや使いどころを、分かりやすい例と共にご紹介します。
ぜひ、次回もお付き合いいただけると嬉しいです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
【☕ ちょっと寄り道コラム:AIの答えの「個性」を調整するツマミ?】
ところで、AIの答え方って、いつも同じじゃないな、と感じたことはありませんか? 実は、AIの応答の「個性」や「傾向」を調整するための、いくつかの「ツマミ」のような設定があるんです。専門用語では「サンプリング制御」なんて呼ばれたりします。
普段、私たちがChatGPTやGeminiなどのAIとチャット形式で会話する時には、これらのツマミを直接いじる機会はほとんどありません。多くの場合、サービス側で、たくさんの人が使いやすいように、バランス良く調整してくれているんですね。だから、あまり気にする必要はありません。
でも、「へぇ、そんな設定もあるんだ」と知っておくのは面白いかもしれません。主なものにこんなものがあります。
- ツマミ1:「まじめ度・自由度」調整ツマミ (Temperature)
- このツマミを「まじめ」寄り(低い値)にすると、AIは一番ありそうな、手堅い答えを選びやすくなります。正確さが大事な時に向いているかもしれません。
- 逆に「自由」寄り(高い値)にすると、ちょっと意外で、多様な、クリエイティブな答えが出やすくなります。アイデアを出したい時などに面白いですね。
- ツマミ2:「答えの候補の選び方」調整ツマミ (Top-K / Top-P)
- AIが答えを選ぶときの「候補」の範囲を決めるツマミです。「特に有力な候補の中からだけ選ぶ(Top-K)」のか、「まあまあ可能性がありそうな候補まで、広く見て選ぶ(Top-P)」のか、といった違いが出ます。
じゃあ、いつ使うの?
これらの「ツマミ」は、主に開発者向けツール(Googleさんの資料に出てくるVertex AIなど)や、特定のAIサービスの設定画面で調整できることがあります。「もっとAIの答え方を細かくコントロールしたい!」という専門的な使い方をする場合に役立つもの、と考えておくと良いでしょう。
なので、今回のところは「AIの答え方には、裏側で調整できる部分があるんだな~」くらいに、頭の片隅に置いておく程度で十分ですよ!
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