こんにちは！下町AI探究者のガジュマロです。
前回は、「【実践編】Excelの関数、もう悩まない？ AIと一緒に「わからない」を解決しよう！」というテーマで、AIに関数の使い方を尋ねたり、エラーのヒントをもらったりする方法についてお話ししました。Excel作業が少しでも楽になった、というお声があれば嬉しい限りです。
さて、Excelには関数以外にも、私たちの作業を助けてくれる心強い味方がいます。それが「マクロ」です。
「マクロ」と聞くと、「なんだか専門用語みたいで難しそう…」「プログラミングなんて、自分には縁がないかな…」と、少し身構えてしまう方もいらっしゃるかもしれませんね。たしかに、マクロの背景にはVBA（Visual Basic for Applications）という、ちょっと専門的なプログラミング言語があります。
でも、ここで「自分には無理かな」と諦めてしまうのは、少しもったいないかもしれません。なぜなら、このマクロ作成への第一歩が、以前よりもずっと踏み出しやすくなっていると感じるからです。
この【基本編】では、まず「マクロってどんなもの？」「AIがどう役立つの？」という基本を押さえ、AIと一緒に、本当に簡単なマクロを「まず、やってみる」体験をしてみましょう。
そもそも「マクロ」って何ができるの？
まず、簡単にマクロについておさらいです。
マクロを一言でいうと、「Excelで行う一連の作業手順を、ボタン一つで再現できるようにする機能」です。
例えば、
- 毎月、同じ形式の報告書を作成するために、特定のセル範囲をコピーして、別のシートに貼り付け、書式を変更する…
- 商品のデータを登録するために、ひな型のシートをコピーしてシート名を変え、別のブックからあちこちに散らばったデータをひとつづつコピペ…
- ダウンロードしたCSVデータから、不要な列を削除し、並べ替えを行って、Excelに取り込んで、体裁を整えて…
といった、繰り返し行う定型的な作業はありませんか？ マクロは、こうした作業を自動化してくれる、いわば「Excelの中の小さなロボット」のようなものです。
うまく使えば、時間のかかる作業から解放され、気持ちの面でも楽になり、さらにうっかりミスも減らせる、とても便利な機能なんです。
AIはマクロ作成の、どんな「助け」になる？
では、AIは具体的にマクロ作成のどんな場面で役立つのでしょうか。主に、以下のようなことが考えられます。
- やりたい作業からマクロのコード（VBA）を作成してくれる：
「こういう作業を自動化したいんだけど…」と、AIに日本語でお願いすると、それを実現するためのVBAコードを提案してくれます。 - 既存のマクロコードを説明してくれる：
以前誰かが作ったマクロや、インターネットで見つけたマクロを、仕組みも分からずにとりあえず使っている、という事があるかもしれません。そんなときに、AIにコードを貼り付けて「このコードは何をするものですか？」と尋ねれば、その内容を解説してくれます。 - 既存のマクロコードを改造してくれる：
以前誰かが作ったマクロは、ちょっとした仕様の変更にも対応が難しく、不便なまま使い続けている、などという事が起こりえます。そんな時、AIにコードを貼り付けて「ここをこう直してほしい」とお願いすれば、コードを改造してくれます。 - マクロのエラーの原因を探る手助けをしてくれる：
自分で作ったり、AIに作ってもらったりしたマクロがうまく動かない…。そんな時、エラーメッセージやコードの内容をAIに伝えて、「どこが間違っている可能性がありますか？」と質問することで、解決のヒントを得られることがあります。
前回の関数と同じように、AIはマクロに関しても、私たちの「相談相手」や「アシスタント」のような役割を果たしてくれる可能性があるのです。
まずは簡単なことから試してみよう！AIにマクロを作ってもらう流れ
「百聞は一見にしかず」とも言いますし、まずは簡単な例で、AIにマクロを作ってもらう流れを体験してみましょう！
お題： 「選択したセルの背景色を黄色にする」
単純な作業で、マクロを作る一連の流れをつかみます。マクロは途中で馴染みのない画面が出てきたり、独特な注意点も出てきますので、まずはマクロに慣れることから始めましょう。
ステップ１：AIへのお願い（プロンプト）を考える
AIに、やってほしいことを具体的に伝えます。
今回はお題がありますので、以下のお願いで行きましょう。
あなた：
ExcelのVBAについて教えてください。
現在選択しているセルの背景色を黄色にするマクロのコードを作成してください。
ステップ２：AIからの回答（コード）を確認する
AIは、次のようなVBAコードを提案してくれるでしょう。
また、多くの場合は説明も加えてくれるので、マクロを理解する事を助けてくれます。
AI:
Sub HighlightCellYellow()
' 選択されているセルの背景色を黄色にします。
Selection.Interior.Color = RGB(255, 255, 0) ' 黄色
End Sub
・Sub から End Sub までが、一つのマクロの処理単位です。
・Selection.Interior.Color = RGB(255, 255, 0) が、実際に色を変える命令の部分です。
ステップ３：Excelにマクロを登録する（※ここは慎重に！）
ここが少しだけ専門的な手順になります。
- Excelを開き、[Alt]キー + [F11]キー を同時に押します。すると、「Microsoft Visual Basic for Applications」という画面（VBAエディター）が開きます。
- メニューバーの [挿入] > [標準モジュール] を選択します。
- 右側に表示された白いエディタ部分に、先ほどAIが生成したコード（Sub HighlightCellYellow() から End Sub まで）をコピー＆ペーストします。
- VBAエディターを閉じます。
これで、マクロの登録は完了です。
見慣れない画面が出てきて、この操作には少し戸惑うかもしれません。しかし、ここがマクロを使うための重要なステップです。ぜひ、手順通りに試してみてください。
ステップ４：マクロを実行して試してみる
Excelシートに戻り、どこかのセルを選択した状態で、[Alt]キー + [F8]キー を同時に押します。「マクロ」という小さなウィンドウ（ダイアログボックス）が表示されるので、先ほど登録した「HighlightSelectionYellow」を選択し、[実行] ボタンをクリックします。
どうでしょうか？選択したセルの背景が黄色に変わりましたでしょうか？
これが、AIと一緒にマクロを動かす、記念すべき第一歩です！
大切な心構え（注意点）
初めてマクロを試す際には、いくつか心に留めておいていただきたいことがあります。特にマクロを作った後のファイルの扱いは重要ですので、よく読んでくださいね。
- 最初はテスト用ファイルで： 慣れないうちは、必ずコピーしたファイルや、失敗しても問題ないファイルで試しましょう。いきなり大事なファイルで試すのは避けてください。
- AIも間違えることがある： AIが作るコードが、常に完璧とは限りません。期待通りに動かないことや、エラーが出る可能性も念頭に置きつつ、「まずは動かしてみる」「そして期待通りか確認する」という姿勢が大切です。
- 情報の取り扱いは慎重に： 会社の機密情報や個人情報など、機密性の高い情報を含む作業内容を、そのままAIへのプロンプト（指示）に入力するのは避けましょう。これは、前回の「AIを使うと個人情報が心配？ 知っておきたいこと、私たちができること」でも触れた点ですね。
- 【重要！】マクロを保存する時のファイル形式： せっかく作ったマクロ、次回も使いたいですよね。そのためには、ファイルを保存する時に特別な形式を選ぶ必要があります。通常のExcelファイル（.xlsx）のまま保存すると、なんとマクロは消えてしまいます！ 必ず、[ファイル] > [名前を付けて保存] を選び、「ファイルの種類」のプルダウンメニューから「Excel マクロ有効ブック (*.xlsm)」を選択して保存してください。ファイル名の後ろに「m」が付くのが目印です。
- 【重要！】次回ファイルを開くとき（セキュリティ警告）： 上記の「Excel マクロ有効ブック (.xlsm)」で保存したファイルを次回開くとき、Excelの上部に「セキュリティの警告 マクロが無効にされました」といった黄色いメッセージバーが表示されることがあります。これはExcelが「本当にこのマクロ、動かしても大丈夫？」と安全のために確認しているサインです。ご自身で作ったファイルや、信頼できるとわかっているファイルであれば、[コンテンツの有効化] ボタンをクリックしてください。これをクリックしないと、せっかく保存したマクロが動かないので、注意が必要です。
【基本編】のまとめ： 小さな一歩が、大きな変化につながるかも
今回は、【基本編】として、AIの助けを借りてExcelマクロの世界に触れる、最初のステップと、マクロを扱う上での大切な注意点をご紹介しました。
マクロは専門知識や勉強時間が必要と思われがちですが、AIの助けがあれば、事前知識がなくても、ぐっと気軽に始められるようになります。
今回試した「セルを黄色くする」マクロは、とてもシンプルなものでした。しかしこれを足掛かりとして、「じゃあ、次はこんなこともできるかな？」という、次への好奇心やステップにつながってくれれば、これほど嬉しいことはありません。
次回は【応用編】として、もう少し実用的な作業例を取り上げ、AIが作ったコードを自分の目的に合わせて少し変えてみる（改造する）ヒントなどについて、さらに探求していきたいと思います。
是非AIとの対話を楽しみながら、マクロという新たな領域を探求してみてください。
それでは、また次回の【応用編】でお会いしましょう！
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