こんにちは! 下町AI探究者 ガジュマロです。
いつもブログを読んでくださって、ありがとうございます。
これまで、AIが私たちの日常の「困った!」をどう助けてくれるか、具体的な例を紹介してきました。それらを読んで、「これなら自分にもできるかも」「ちょっと試してみようかな」なんて、少しでも感じていただけていたら嬉しいです。
一方で、AIによく言われる、リスクの話も避けては通れません。
そこで今回から「AIリスク対策シリーズ」と題して、皆さんがAIともっと安全に、もっと賢く付き合っていくためのヒントを、数回にわたってお届けしていこうと思います。
記念すべき第1回のテーマは、「AIの答えの信憑性」についてです。
AIと対話していると、本当に驚くほど的確な答えや、素晴らしいアイデアを返してくれることがありますよね。私自身、その賢さには常々驚かされています。
でも、その一方で…
そうです。AIは、時々「えっ!?」と驚くような間違いをしたり、もっともらしい嘘(ハルシネーションと言います)をついたりすることがあるんです。そのせいで、
「AIは平気で嘘をつくから信用できない」
「だからAIなんて使えない」
そんな声を聞くことも、正直少なくありません。
しかし、そこで思考停止してしまうのは、あまりにもったいないことです。
そこで今回は、「AIは間違える」という事実をちゃんと受け止めた上で、じゃあどうやってその情報と向き合い、その便利さを最大限に引き出すかについて、お伝えして行きたいと思います。AIの「クセ」を知り、情報の「目利き」になる。それが、これからの時代、AIと上手に付き合っていくための鍵になるはずです。
なぜAIは間違うことがあるのか?
AIはインターネット上の膨大な情報を学習して、その知識をもとに「最もそれらしい」文章や答えを作り出しています。これは本当にすごい技術なのですが、いくつかの理由で間違うことがあります。
- 教科書 (学習データ) に潜む複数のワナ:
- 教科書に誤りが含まれている可能性:
ご存知の通り、インターネットの情報が全て正しいわけではありません。残念ながら、誤った情報や不確かな情報もたくさん含まれています。もしAIが、そういった間違った情報で学習してしまったら… 当然、AIが出す答えも間違ってしまう可能性があります。 - 教科書が古い可能性:
AIが学習するのは、あくまで「過去」のデータです。例えば、あるAIが2023年までの情報で学習したとします。その後、2024年に新しい法律ができたり、お店が移転したり、新しい商品が発売されたりしても、そのAIは基本的にその変化を知りません。結果として、古い情報を元にした答えを返してしまうことがあります。 - 教科書が偏っている可能性
教科書に特定の意見や視点が偏って含まれていると、AIの回答もその影響を受けてしまうことがあります。例えば、ある商品に対する肯定的なレビューばかりで学習した場合、AIはその商品の良い面ばかり強調するかもしれません。あるいは、社会問題に関する議論で、特定の立場からの意見ばかり学習した場合、AIの回答もその立場に偏ったものになる可能性があります。これは「バイアス」と呼ばれ、AIの公平性を損なう原因の一つと考えられています。
- 教科書に誤りが含まれている可能性:
- 「それらしい嘘 (ハルシネーション) 」を作ってしまう可能性:
AIは質問に「何か答えなければ!」と健気に頑張ってくれる性質があるようです。そのため、実はよく知らないことや、学習データにない情報について尋ねられた場合でも、「分かりません」と素直に言う代わりに、これまで学習してきた言葉のパターンを巧みに組み合わせて、もっともらしい、でも事実とは異なる「オリジナルの答え」を作り出してしまうことがあります。これが、いわゆる「ハルシネーション(幻覚)」と呼ばれる現象の正体の一つです。悪気はないのですが、結果として「嘘」に見えてしまうんですね。
こんな質問には要注意? AIが間違いやすいこと
AIは非常に幅広い知識を持っていますが、特に以下のような内容については、答えが不正確だったり、古かったり、あるいは「それらしい嘘」だったりする可能性が、他の分野に比べて高い傾向があるようです。
- 正確なデータとその出典・情報源:
- 「〇〇についてのデータを載せて。また、その情報の出典も併せて載せて」などとお願いすると、もっともらしいデータと共に、書籍名やURLを答えることがあります。しかし実際には、それが実際に存在しなかったり、内容と全く関係なかったりすることがあります。
- 非常に専門的・ニッチ(マイナー)な情報:
- インターネット上でも情報が少ない、ごく一部の人しか知らないような専門分野の詳細や、特定の地域限定の非常に細かい情報(例:町内会のイベントの詳細など)は、AIも学習できていない可能性が高く、もっともらしい間違いを回答する可能性があります。
- 複雑な計算や、厳密な論理が求められる問題:
- AIは言葉を扱うのは得意ですが、数学の問題を解いたり、何段階もの論理的な推論を正確に行ったりするのは、まだ完璧ではありません。中でも計算問題は、簡単なものでも間違える可能性があるので、文章中で数式等を取り扱う際には注意が必要です。
もちろん、AIは日々進化しているので、これらの苦手分野も少しずつ克服されていくでしょう。しかし、「こういう質問は、特に慎重に答えを確認しよう」と意識することで、よりAIとの付き合い方が上手になると思います。
うまく「答え合わせ」をするには?
AIの答え、特に上で挙げたような「ちょっと注意が必要かも?」と感じる情報は、どうやって確認すればいいでしょうか。
これは普段、私たちが何か新しい情報を得た時に、当たり前にやっていることと似ているかもしれません。
- 情報源をAI自身に聞いてみる
AI自身に「その情報の出典元とURLを教えてください。」と尋ねてみましょう。そして出てくる出典元を訪れてみて、情報を確認してみましょう。 - 他の情報源でも調べてみる(裏付けをとる)
AIが言っていたこと、特に「これは重要だな」と感じた情報(例えば、具体的な数値、日付、出来事、人物名など)については、GoogleやYahoo!などの検索エンジンを使って、他のウェブサイトでも同じ情報が載っているか調べてみましょう。信頼できる公的な機関源のサイトや、大手の報道機関の記事、専門機関のウェブサイトなどで同じ内容が見つかれば、信憑性はぐっと高まります。 - 詳しい人の意見を参考にする
もし専門的で経験的な内容であれば、その分野の専門家が書いた書籍やブログ記事、信頼できる情報サイトなどを探してみましょう。 - 「あれ?」自分の感覚も大切に
AIの答えが、自分の知っていることや常識と比べて、なんだか不自然に感じたり、話がうますぎると感じたりしたら、一度立ち止まってみることも大切です。案外、人間の「あれ?」という違和感は、正確だったりします。 - 他のAIにも聞いてみる: もし複数のAIツール(例えば、ChatGPTとGeminiとClaudeなど)を使える環境にあれば、同じ質問をそれぞれのAIに投げかけてみるのも面白いです。もし答えが大きく食い違うようなら、その情報は疑ってかかる方がいいです。
AIとの新しい付き合い方:「間違い」を前提に、賢く協働する
さて、ここまでAIの答えを確かめる方法を見てきました。
そして、「AIって、やっぱり間違えるんだな」「だから使えないんだよ」と改めて感じたかもしれません。
でも、ちょっと視点を変えてみてはどうでしょうか。
AIが時々見せる勘違いや的外れな答えって、なんだか私たち人間の「うっかり」や「考え方のクセ」に似ていて、妙に「人間くさい」と感じませんか? 完璧ではないからこそ、なんだか身近に感じられるし、付き合い方も分かる、そんな側面もあるように思うんです。
大切なのは、その「不完全さ」を欠点として切り捨てるのではなく、「そういうものだ」と受け入れた上で、どうすれば上手くパートナーシップを組めるか、を考えることだと思います。
また、「いちいち確認するのは面倒だし時間もかかるよな…」と感じるのも分かります。しかし、AIが作成した「たたき台」を基に、私たちが批判的に検討し、修正・加筆する作業は、ゼロから全てを自力で行うよりも、結果的に速く、質の高いものを生み出せる可能性を秘めています。「答え合わせ」は、単なる確認作業ではなく、AIとの効率的な協働プロセスの一部です。
AIは強力な「アシスタント」や「道具」です。そして、最終的な判断や価値を加えるのは、私たち人間の役割です。AIの提案を「参考意見」として活用し、自分の頭で考え、磨き上げていく。それこそが、AIとの賢い付き合い方であるように思います。
AIリスク対策シリーズ、第1弾「AIが出した答え、それって本当にホント? AIとの賢い付き合い方」をお伝えしました。
次回は、AIを使う上では切っても切れない、情報の漏洩問題について、一緒に考えていきたいと思います。
それではまた次回、お会いしましょう!
【コラム】AIが”誰かの色メガネ”で見ている?! 意図的な「AIバイアス」の恐ろしさにご用心!
本文ではAIの「うっかりした間違い」や、学習データによる「意図しない偏り(バイアス)」について少し触れました。
しかし実は、もっと注意が必要なケースがあるんです。それは、AIが「意図的に」「誰かの都合の良いように」偏った情報を出すように操作されてしまうという危険性です。
「AIって機械だから、中立で公平なんじゃないの?」って思いますよね。しかし残念ながら、AIを自分たちの利益のために悪用しようとする方法があり、そしてその手段を実際に行う人や組織があります。今日は、そんな「意図的なAIバイアス」のちょっと怖い手口と危険性、そして対処法についてお話しします。
どうやってAIは「わざと」偏らされるの?代表的な手口
公平で賢いと思われていたAIが、ある日突然、それと分からないように洗脳され、操られる、なんて、まるでスパイ映画かSF映画みたいですよね。しかし実際に、AIを操るための巧妙な手口が色々と考えられ、実行されています。
- 手口その1:AIの「教科書」に”毒”を盛る(データポイズニング) AIは大量のデータ(教科書)を読んで学習しますよね。この「教科書」に、こっそり嘘の情報や偏った意見を大量に混ぜ込んでしまうのが「データポイズニング」という手口です。 例えば、ある国のプロパガンダ組織が、自分たちに都合の良い偽ニュースばかりを大量に作り、それをAIにたくさん読ませたとします。すると、AIはその偽ニュースを「正しい情報」として学習してしまい、私たちが質問した時に、その嘘を本当のことのように話し出してしまう…なんてことがあります。そしてそれは、実際に報告されています(ロシアの「Pravda」ネットワークの事例などがそれに当たります)。まるでAIを偏った思想で”洗脳”するみたいで、ちょっと怖いですよね。
- 手口その2:AIに「秘密の呪文」を唱えて操る(プロンプトインジェクション) これは、AIチャットボットなんかに、私たちが入力する質問文(プロンプト)を巧みに細工して、AIが本来やってはいけないことをさせたり、隠している情報を喋らせたりする手口です。 例えば、特殊な命令文をこっそり質問に紛れ込ませることで、AIの安全装置を解除してしまったり(「脱獄」なんて呼ばれます)、企業の秘密情報を聞き出したり、特定の製品を不当に褒めさせたり…。まるでAIを”ハッキング”して、操り人形にしてしまうようなイメージです。
- 手口その3:自分のお店だけ「えこひいき」するAI店長(アルゴリズムによる自己優遇) これは、大きな力を持つプラットフォーム企業が、自社のサービスや商品が有利になるように、AIの仕組み(アルゴリズム)そのものを調整してしまうケースです。 例えば、ある検索エンジンが、商品を検索した時に、自分たちが運営するショッピングサービスの商品ばかりを検索結果の上の方に表示して、他のライバル店の商品を目立たなくしちゃう、なんてことが実際にありました(Googleショッピング事件として知られています)。これでは、私たち消費者は公平にお店や商品を選ぶのが難しくなってしまいますよね。
誰が、何のためにそんなことをするの?
AIを意図的に操作しようとする人たちの目的は様々です。
- お金儲けのため: 自社の製品やサービスを不当に有利に見せて、もっと儲けたいと考える企業。
- 特定の考えを広めたい、選挙を操作したい: 自分たちの思想や政治的主張を広めたり、選挙で特定の人を有利にしたり不利にしたりしたいと考える組織や国家。
- 社会を混乱させたい、困らせたい: 偽情報を流して人々をパニックに陥れたり、社会の仕組みをめちゃくちゃにしてやろうと企む人たちもいるかもしれません。
「わざと偏ったAI」が私たちの暮らしにもたらす本当の怖さ
こうした意図的な操作は、ただ「AIが間違った情報を言う」というだけでは済まされない、もっと深刻な影響を私たちや社会全体に与える可能性があります。
- 信じるものが分からなくなる: AIが流す情報が、誰かの意図で歪められていたら、私たちは何を信じていいのか分からなくなってしまいますよね。ニュースや情報そのものへの信頼が揺らいでしまいます。
- 知らないうちに不公平な扱いを受ける: 例えば、就職やローンの審査にAIが使われるとして、そのAIが密かに操作されて、特定の人たちを不当に差別するような判断をしていたら…? 私たちは気づかないうちに、大きな不利益を被ってしまうかもしれません。
- 社会の分断が進んでしまう: 偏った情報や偽情報がAIによって大量に広められると、人々が誤った認識を持ち、社会の中で対立や分断が深まってしまう危険性があります。
- 民主主義が脅かされる: 選挙の際に、有権者を特定の方向に誘導するような情報操作がAIで行われたら、公正な選挙が成り立たなくなってしまいます。
じゃあ、私たちはどうすればいいの?
こんな話を聞くと、「AIってやっぱり怖い…」と感じてしまうかもしれません。でも、盲目的に怖がっているばかりでは、前に進めません。大切なのは、こういう危険性があることを「知っておく」こと。そして、私たち自身が賢い情報との付き合い方を身につけることです。
- 「AIの言葉、もしかして誰かの”ささやき”入り?」と一歩引いてみる: AIが何かを強く主張したり、あまりにも一方的な情報を提示してきた時は、「これは本当に客観的な情報かな?誰かにとって都合の良い話になっていないかな?」と、少しだけ疑いの目を持つことも大切です。
- 情報源の確認はやっぱり大事!: 本文でもお話しした「答え合わせ」のテクニック、特に情報源を確認するクセは、意図的な操作を見抜く上でも非常に重要です。
- 「こんな危険もあるんだ」とアンテナを張っておく: AIを悪用する手口も、残念ながら日々進化しています。ニュースなどでAIの新しいリスクについて報じられていたら、少し気にして情報を追ってみるのも、自衛のために役立ちます。
AIは本当に素晴らしい可能性を秘めた道具です。しかし一方で、その力を悪用しようとする試みも存在します。私たち一人ひとりが、AIの情報に対して「健全な批判精神」を持ち、情報を見抜くリテラシーを高めていくこと。それが、意図的なバイアスから自分自身を守り、ひいては社会全体を守ることにも繋がっていくのだと思います。
技術の進歩は、常に新しい光と影を生み出します。その両面をしっかりと見据えながら、私たちも賢く成長していきたいですね。
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